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 Vol.1 校長からご挨拶

 Vol.2 ヘドンのスミスカラー

 Vol.3 ザラゴッサ Jr.

 Vol.4 「WORKS.2010」

 Vol.5 雄蛇ヶ池の悪夢

 Vol.6 初バス

 Vol.7 我慢できない自分

 Vol.8 裏セミ

 Vol.9 「ロッドとプラグと
       ラインの関係」裏話


 Vol.10 日記帳から甦った
      津久井湖の記憶


 Vol.11 FO-60の変遷

 Vol.12 IHFE・マグナム
        40thカラー


 Vol.13 相模湖

 Vol.14 5月の明暗

 Vol.15 夏の思い出

 Vol.16 バス釣り・・
      ・・沢山のing


 Vol.17 沢山のing・・
      ・・プラッギング


 Vol.18 グリップの話

 Vol.19 ロッド作りの裏話

 <Vol.20〜>



玉越アカデミー

玉越アカデミー校長室 Vol.19

ロッド作りの裏話

 スーパーストライクのロッドが初めて世に出てから33年になります。実際には間に、

 ストライクのマークは入っていたが、テラミス・バトラックスの時代が8年間

 ストライクの名前自体も消えていた時期が、1995年〜2005年の11年間

あるので、実質17年といった所でしょうか。その間何らかの形でストライクのロッド開発に係わって来たのですが、正直言って私自身が合格点を付けられても満点を付けられるロッドが作れていません。多分、今後も出来ないのでは?とも思います。

 何故か?

 ロッド制作には金属加工物のように100分の1台の精度を出すシステムが無いらしいのです。簡単に言うと、通常プリプレグと呼ばれるシート(カーボン繊維を樹脂で繋いでシート状にしたもの)を芯金に巻きつけ、その上からテープを巻いて締め、窯に入れて焼き、焼き上がったら芯金を引き抜きます。こうして中空のブランクが出来上がります。

 しかし、この状態ではテープで巻いた段差が付いたままです(この状態で仕上げているロッドもある。例:ツアラーのSTS−HM63SS)。通常はこれにサンディングを掛けて表面を平らに仕上げます。

tape.jpg(3504 byte)
焼き上がった芯金の表面についた段差


 最後にカラーリングを施して出来上がりとなるのですが、テープを巻いて締める力が強すぎると、焼き上がった時に曲がりが出てしまいます。外国ではあまり問題にならないような曲がりでも、日本では気にして返品になるので気を使うそうです。

 逆に、テープの巻きが緩いと曲がりは出ませんが、出来上がったロッドが折れ易くなるのです。

 また、テープの段差を消すサンディングですが、ここでも強弱によってロッドの径が微妙に違って来ます。あるメーカーでは仕上げの基準が基サンプルに対して±0.15mmならOKとしているそうですが、プラス傾向のロッドとマイナス傾向のロッドでは最大0.3mmの太さ違いのロッドが存在することになります。

 径が0.3mm違ったら長年釣りをやっている人ならアクションの違いが分かると思います。私自身はこの±0.15mmと言うのは納得出来ないのです。攻めて0.1以下で留めて欲しいのですが、これが中々難しとの事です。




 素材そのものにも変化があって、グラスロッドに付いて解説すると、グラスロッドが初めて世に出た頃は、ガラス繊維をシート状にする繋ぎの接着剤はフェノール樹脂でした。

 ほどなくしてエポキシ樹脂が現れて、今はエポキシ樹脂を使っています(カーボンも同じ)。エポキシ樹脂を使ったロッドの方が軽くてもたつかないロッドになったと記憶していますが、何せ45年位前の事なので詳しくは覚えていません。

 その後、技術が進歩してゆき、グラスもカーボンも低レジンコントロールと言われる繋ぎの樹脂を少なくしてプリプレグを作れるようになりました。 これにより、素材そのものの特性が生きるようになって来たのです。

 すなわち、グラスロッドはより軽くなり、シャキッとしたアクションになったのです。

 グラスの愛好家はグラス特有の粘りとかトルクとかが好きで拘っていますが、今は昔と同じ粘りとかは出せないと言って良いでしょう。

 さらに、今はカーボン全盛の時代ですから、グラス素材の需要がどんどん少なくなってしまった為、メーカーもベーシックな種類以外は生産を中止してしまいました。従って色々な特性のシートを使う事が出来ないのです。

 だから、FO−60も昔と同じ芯金を使って作ったとしても軽くて昔よりも粘りが少ないロッドになります。その為、バットのテーパーを工夫して少しでも近づけるようにしたのです。しかし全く同じに作る事は不可能なのです。

 こんな事もありました。SS−WS55TMの開発時のことです。このロッドはFO−55Lをモデルにワン&ハーフの2本継ぎをワンピースで仕上げる事がテーマでした。

 サンプル作りは上手く進んで、2回目のサンプルでOKを出し、生産が開始されたのですが、製品が上がって来て検品の為、手に取って見たら重いのです。(これは開発担当だから判るのですが)

 すぐに生産工場へ連絡してチェックしたら、サンプル作りの時の素材が無くなったので、新たに同じ物を仕入れて製品を作った事が判明。

 ところが、今回仕入れた素材は1uあたり3%樹脂料が前の物より多いとの事。従ってその分重くなってしまったのです。でも今は流通しているグラス素材は少なく、選べないので今後はこの素材で竿作りをしなければなりません。

 以前から、OKを出したサンプルよりも製品になると、あのメーカーは少し強くなる、このメーカーは柔らかくなる。とかの話も聞かれるのですが、いたしかたない部分もあるようです。

と、まあ〜こんな色々な要素があるので、満点と言えるロッドが出来ていないのもご理解いただけるかと思いますが、もし出来たとしてもそれは私にとっての満点でしかないのです。

「竿の好みは十人十色」

でして、Aさんにとって最高のロッドでも、Bさんにとってはそこそこのロッドでしかなく、Cさんにとっては使い難いロッドと言う評価がなされることも多いのです。

 ロッド作りでは色々な人に意見を聞いて、全てを網羅したロッドを作ると可もなく不可もないロッドになって最初の目的から外れてしまう。なんて事が多々あるのですよ。ですから開発担当はその辺りを整理して作るのですが、やはり、

 自身がどれだけその釣りに精通しているか?
 何を目的としているロッドか?

等がブレないことが重要だと私は思っています。

 実は今、クラッシックシリーズにSC−1を復活させる為のサンプル作りが始まっています。

 発売当時のブランクは、アメリカREC社のカーボナイトブランクと呼ばれていた素材で、今では手に入りません。
カーボン素材も今は軽くて張りの強い素材が全盛ですが、この素材はカーボンでありながらグラスっぽい粘りも有りました。


クラッシックシリーズにSC−1復活なるか?

 全く同じ物は出来ませんが、当時と同じような感覚で使えるロッドを目指しています。皆さんはどう感じるか・・・?

 こうご期待です!。



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